キャリアチェンジとは


【-キャリアチェンジとは- 盲導犬以外の可能性】

ショッピングモールやイベント会場、また学校で、実際の盲導犬と触れ合う機会「デモンストレーション」※1をご覧になったことはありますか?
こうした啓発行事や見学の場で活躍する犬は、特別な場合を除き「PR犬」※2と呼ばれる、「キャリアチェンジ」※3をしたかつての盲導犬、または盲導犬の候補生が派遣されます。

キャリアチェンジとは、訓練の過程で目の不自由な人を安全にサポートするべき盲導犬としては、一定の条件を満たしていない/向いていない犬が、それぞれの性質や特性を活かした分野で能力を発揮して、活躍することをいいます。

キャリアチェンジした犬たちは、手足の不自由な方をサポートする介助犬、災害救助犬や警察犬(麻薬探知犬)、セラピードッグとして、盲導犬とは違う別の分野で、優秀な働きをしています。

盲導犬はほとんどの場合、優秀なお父さん犬と、同じく優秀なお母さん犬から生まれますが、子犬の全てが盲導犬になるわけではありません。

優秀な両親から生まれた同じ兄弟犬であっても、それぞれに個体差や個性があり、性格も似ているようで、そうでないところや、お父さんに似ていたり、またお母さんに似ていたりと、その特性は、さまざまです。

盲導犬に向いている犬の特性とは、

1)人間を安全に誘導するために充分な体格を満たしていること。
2)音に敏感すぎる性質でないこと。
3)待つことが苦手でないこと。
4)吠え癖のないこと。
5)乗り物などに酔わないこと。

上記のほかに、人が好きなことや、お仕事が好きなことなどが、主な条件として挙げられます。

これも強制などではなく、元から備わった素質により、盲導犬になれる適性があるという犬にのみ、訓練することとなります。

生後2ヶ月目、犬の発達行動学的には「社会化期」にあたる時期に親元を離れ、パピーウォーカーさんのお宅で生育することになる子犬たちにとって、この時期(約10ヶ月から1年)の経験値や愛情が、犬たちが将来盲導犬になった時、活かされるべき能力に繋がるため、もっとも重要となります。

子犬たちはすべて、将来優秀な盲導犬になる可能性を秘めた犬たちです。

それと同時にキャリアチェンジをして、また別の分野で力を発揮するかもしれぬ犬でもありますし、あるいは一般の家庭犬として、過ごすことになるかもしれない可能性もあります。いずれの場合も犬の個性を大事にし、能力を伸ばしながら、人とともに毎日貴重な時間を積み重ねています。

盲導犬を待ち望むユーザーさんのためにも、育成にかかわったボランティアさんや関係者全員が一頭でも多く、そして早く優秀な盲導犬が誕生してくれることを願って、温かい目で見守りながら、日々一生懸命に取り組んでいます。


※1
デモンストレーションは、盲導犬がどのくらいの大きさか?どれだけやさしく、おとなしい、優秀な犬か?そして、目の不自由な方への理解をより多くの方々に知って頂くため、各協会が主宰し、各地で(ほぼ毎週)定期的に実施されています。 訓練士または、歩行指導員が、盲導犬が着用する「ハーネス」を実際に装着し、白杖やアイマスク(目隠し)などを使い、障害物に見立てたパイロンやコーンなどを盲導犬がどのように回避し、目の不自由な方の歩行をサポートするか?など、実際に体験することができます。

※2
「PR犬」は、かつて盲導犬であったがキャリアチェンジした犬、または盲導犬として100%ではないにしても、訓練次第で90%以上の能力を発揮できる可能性を秘めた候補犬が主に派遣されます。

※3
キャリアチェンジ=盲導犬になれなかった犬=盲導犬不適格という意味ではありません。かつてキャリアチェンジという言葉が、一般的となる前は、リジェクト犬(reject=拒否、不合格など)と言われていた時期もあったことで、ネガティブな印象をもたれがちですが、これは誤った認識です。キャリアチェンジは"盲導犬になれなかった犬"ではなく、犬たちがそれぞれの特性を活かした働きで、力を発揮できるためにある言葉で、「能力が 劣る」という意味ではないことを是非知って頂きたいと思います。

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